鎮痛には、鎮痛薬を使用することになります。 痛みは患者さんが我慢できるなら、薬を使わずに我慢したほうがよいのでしょうか?
痛みは精神的な苦痛もさることながら、生理学的にも身体に悪影響を与えます・痛みを感じるとエネルギー消費量が増え、免疫機能にも影響を及ぼします・重症患者さんにとっては無視できない影響となります。
また・痛いという刺激は交感神経を刺激することとなり、循環動態が不安定な場合、血行動態が悪化する可能性があります。
さらに、痛みは不穏やせん妄の原因にもなります。不穏やせん妄の誘因になると様々なことが生じます。
以上のことから、重症患者さんにおいて、適切な鎮痛管理がなされることが求められます。
不穏っとは、体動が激しく、興奮した状態です。
せん妄とは、注意と意識の障害です。不穏はせん妄の一症状です。 鎮痛・鎮静管理がうまく行えているかは、不穏の有無に現れます。
不穏の明確な定義はありますが、穏やかではなく、体動が激しい・興奮しているなど・不安で危険をはらんだ精神状態を意味します。
不穏を発症すると、患者さん自身による 気管チューブやライン類・ドレーンの抜去事象や、転倒・転落などのリスクが高まります・そのため、重症患者さんに不穏を起こさないこと、また、不穏が起きたらすぐに対処することが重要です。
不穏の原因にはさまざまあります。
重症患者さんでは、
低酸素血症やアシドーシス「血液のphが酸性に傾いた状態」・血糖コントロール不良、低血糖などの生物学的要因
手術侵襲、消化管ガスの貯留や膀胱の充満などの身体の刺激
気管チューブの位置の異常
などによる気管チューブの不快
睡眠障害
慣れないICUの環境や行動制限によるストレス、治療や今後の不安などが生じるとされています。
つまり、苦痛や不安が「不穏」として表出されるのです。
せん妄とは、脳機能障害が急性に発症し、精神状態の変化や変動、注意力障害、意識のレベルの変化がみられる症候群です・
随伴症状には、幻覚や妄想・睡眠障害・精神運動異常および情緒の障害
「恐怖・不安・怒り・いらいら・うつ・無感情・多幸など」があります。情諸の障害は急速であり、情動は変化していきます。